現在の研究テーマ

高性能計算に関する研究

 近年、さまざまな産業応用分野において、計算機による数値シミュレーションの重要性が高まっています。例えば、自動車や橋の設計といった機械・土木・建築分野、タンパク質の構造解析やヒトのDNA解析といった生物・医学分野、航空機の設計や衛星の開発と打ち上げといった航空宇宙分野などがあげられます。このような分野では、より最先端の研究開発を行うため、より高性能なコンピュータが求められています。このような高性能なコンピュータを利用した大規模・高速計算をHPC(High Performance Computing)とよんでいます。現在、このHPC分野では複数のプロセッサを有効に活用して計算を行う、並列・分散処理が主流となっています。例えば、北大情報基盤センターによりサービスされているスーパーコンピュータは多くのCPUコアを備えた並列計算機です。しかし、並列計算機を効率よく利用するには並列化されたプログラムコードを作成する必要があり、従来の1CPUによるプログラム開発と比べ困難であるという問題があります。また、解法自体を並列化したり、並列処理に適合した解法を開発する必要がある場合もあります。そこで、応用分野の技術者、研究者にとって、並列・分散計算環境がより容易にかつ効率的に利用できるように、様々な研究を行っています。

計算科学の基盤技術

 計算科学はスーパーコンピュータ上の最も重要な応用で、その基盤となるプロ グラムには高速性、頑強性、信頼性等の様々な意味で高性能かつ高品質である ことが求めらます。一方、近年の計算環境は京コンピュータに代表されるよう に大規模並列化、ノード間結合網の複雑化が進み、このような要請に答えるに はプログラマの自助努力だけでは不十分となりつつあります。そこで、計算科学シ ミュレーションにおいて重要な幾つかの問題や解法に着目し、これを支援する ソフトウェア、具体的には並列フレームワーク、並列化ライブラリに関する研 究を行っています。
  1. 高性能3次元ポアソンソルバの開発
    ポアソンソルバは多くの 計算科学シミュレーションにおいて用いられる重要な計算核です。特に大規 模並列計算環境上のマルチフィジックスシミュレーションでは、陽的な解法に 基づいた解析プログラムによって実現される物理シミュレーションとの併用化 において解析速度のボトルネックとなることが多くなります。そこで、大規模並列計算 環境において高い性能を実現するポアソンソルバの開発を行っています。
  2. 大規模境界要素解析支援ソフトウェアの開発
    境界要素法は差分法や有限要素法と並 んで、偏微分方程式の離散解法として主要な方法の一つです。しかし、境界 要素解析は要素積分等の構成要素に多様性があり、これまでそれを支援するソ フトウェア、特に大規模並列計算環境を意識したものはほとんど見当たらない 現状があります。そこで、境界要素解析を大規模並列計算環境下で効率的に実行 するための並列化フレームワークの研究を行っています。本研究はJSTのCRESTプロジェクトとして実施しています。


高性能な大規模連立一次方程式の求解法

 様々な物理現象の数値シミュレーションでは、方程式を離散化することにより、 最終的に大規模な連立一次方程式の求解に帰着します。また、近年注目されているビッグデータの解析においても連立一次方程式の求解が必要となる場合があります。そこで、このような連立一次方程式を高速に解くことは重要な課題であり、大規模問題の求解に適した反復解法を対象として並列処理による高速化について研究しています。これまでにプロセッサ間の同期コストやキャッシュヒット率を考慮し た新たな並列化手法などを開発しています。また、反復法では逐次・並列実行の いずれの場合においても求解に必要な反復回数の低減がその高速化において重 要となります。そこで、対象とする問題の性質を活用することにより収束性を向上 させる技術について研究を行っています。

高速電磁場解析

 電磁場解析は電子デバイス・電気機器の設計において重要な役割を果たしてい ます。そこで、京都大学の美舩助教、同志社大学の高橋助教らと共同で大規模 電磁場解析の高速化に取り組んでいます。アンテナ等の電子デバイスの解析に用 いられる高周波領域での電磁場解析では、大規模問題に有効性の高いマルチグ リッド法と並列処理を含む高性能計算技術を効果的に活用し、国際的にも事例 報告の少ない8億自由度の大規模解析を250秒以内で実現しています。本研究は株式会社ソニーとの共同研究として行いました。また、時間領域 の解析では、実応用解析において幅広く利用されている3次元FDTD法を対象と して、時空間タイリングによるキャッシュメモリの効果的な利用による計算性 能改善に関する研究を行っています。

これまでの発表論文 (2014年3月31日現在) [pdf版のpublication list]

学術論文誌 58件
国際会議による発表 94件
口頭発表 167件

主要な研究成果

  1. 南武志, 岩下武史, 中島浩;「冗長な計算を伴わない3次元FDTD法の時空間タイリング」, 情報処理学会論文誌:コンピューティングシステム(ACS), Vol. 6, No. 1, (2013), pp. 56-65.
    
    
    
    
  2. Takeshi Iwashita, Yu Hirotani, Takeshi Mifune, Toshio Murayama and Hideki Ohtani, "Large-scale time-harmonic electromagnetic field analysis using a multigrid solver on a distributed memory parallel computer", Parallel Computing, Vol. 38, (2012), pp. 485-500.
    
    
    
    
  3. Takeshi Iwashita, Hiroshi Nakashima, and Yasuhito Takahashi, "Algebraic block multi-color ordering method for parallel multi-threaded sparse triangular solver in ICCG method", Proceedings of 26th IEEE International Parallel & Distributed Processing Symposium (IPDPS 2012), Shanghai, China.
    
    
  4. Takeshi Mifune, Yasuhito Takahashi and Takeshi Iwashita, "Folded Preconditioner: a New Class of Preconditioners for Krylov Subspace Methods to Solve Redundancy-Reduced Linear Systems of Equations", IEEE Transactions on Magnetics, Vol. 45, No. 5, (2009), pp. 2068-2075.
    
    
  5. Takeshi Iwashita, Takeshi Mifune and Masaaki Shimasaki, "Similarities Between Implicit Correction Multigrid Method and A-phi Formulation in Electromagnetic Field Analysis", IEEE Transaction on Magnetics, Vol. 44, No. 6, (2008), pp.946-949.
    
    
  6. Takeshi Mifune, Satoshi Isozaki, Takeshi Iwashita and Masaaki Shimasaki, "Algebraic Multigrid Preconditioning for 3-D Magnetic Finite-Element Analyses Using Nodal Elements and Edge Elements", IEEE Transaction on Magnetics, Vol. 42, No. 4, (2006), pp. 635-638.
    
    
  7. Takeshi Iwashita, Yuuichi Nakanishi and Masaaki Shimasaki, "Comparison Criteria for Parallel Orderings in ILU Preconditioning", SIAM Journal on Scientific Computing, Vol. 26, No. 4, (2005), pp. 1234-1260.
    
    
  8. Takeshi Iwashita and Masaaki Shimasaki, "Block Red-Black Ordering: A New Ordering Strategy for Parallelization of ICCG Method", International Journal of Parallel Programming, Vol. 31, No. 1, (2003), pp. 55-75.
    
    
  9. Takeshi Iwashita and Masaaki Shimasaki, "Algebraic Multi-Color Ordering for Parallelized ICCG Solver in Finite Element Analyses", IEEE Transaction on Magnetics, Vol. 38-2, (2002), pp. 429-432.
    
    
  10. 岩下武史, 松尾哲司, 石川本雄, 卯本重郎;「商用規模石炭燃焼亜音速ダイアゴナル形MHD発電機の安定性解析 -流速低減による安定性の改善-」, 電気学会論文誌B, 117 巻, 6号, (1997), pp. 864-871.